なぜサヨナラ勝ちの”サヨナラ”って言うのかな。そんな疑問を年の瀬、2018年の年末に思いつきました。
きっかけは、年末の野球バラエティー番組です。
劇的なシーンとしてサヨナラの場面が紹介されたとき、「そう言えば野球が好きな割に、なんでサヨナラって言うか知らないな」とちょっと恥ずかしくなったのです。
そこで、今回はなぜサヨナラと言うかを調べるとともに、アメリカの「サヨナラ勝ち」などについても考えていきたいと思います。
仮説:なぜ「サヨナラ勝ち」と呼ぶのか
まず、自分なりにサヨナラ勝ちの「サヨナラ」の由来を考えてみました。つまり、仮説を立てました。
ただ調べるのと、考えてから調べるのでは理解度が違うらしいですからね。
それでは、以下に僕なりの仮説を3つ挙げます。
仮定1. 勝ってすぐに”さようなら”するから
サヨナラ勝ちするとその時点でゲームが終わります。
だから、ゲーム・オーバー(ゲーム終了)として、「ゲームから離れる=さようならする」というところからきているという理由です。
仮定2. 勝って相手を永遠に追いつけなくするから
まあ、これも理屈っぽい理由です。
サヨナラ勝ちすることで、勝利が確定し、守っている負けたチームはもう追いつけなくなります。
だから、相手チームを勝利から永遠に遠ざけるという意味で「サヨナラ」するから、という理由です。これはちょっと皮肉っぽいから微妙です。
仮定3. アメリカ由来=Goodbye Baseball
3つ目は、単純に野球発祥のアメリカの英語から訳してサヨナラになったという理由です。実際にメジャーリーグの実況で「Goodbye Baseball」って言っるのを聞いたことがあります。
つまり、単純に「Goodbye」を訳して「サヨナラ」になったという説です。
野球の「サヨナラ」について調べた結果と考察
野球の「サヨナラ」について調べた結果
ではいよいよ検証です。検証とは言ってもインターネットで調べるだけですが。
調べてみると、どうやらWikipediaにあっさりと載っていました。
勝利チームの攻撃で試合が終わる事から、「さようなら」を略して「サヨナラ」と呼ばれる。
出典:Wikipedia | サヨナラゲーム
なるほど、「勝利チームの攻撃で試合が終わる事」というのが根拠ということですね。
野球の「サヨナラ」について調べた結果の考察
いや、でも、サヨナラ勝ちではなくても試合が終わるし、試合からサヨナラするし(試合終了)、球場からも離れますよね。
また、「サヨナラ」っていう割に、サヨナラのホームインする人を「さようなら」と見放すのではなく、「いらっしゃい」と迎えいれていますよね?(ヘルメット叩くとか、ペットボトルの水かけるとか)。
ここで、何がこのような根拠となっているかを考えてみます。
文言をよく見ると「勝利チームの攻撃で」+「試合が終わる事」という2つの情報に分けられることに鍵がありそうです。
確かに「試合が終わる事」というのは、サヨナラ勝ちであってもなくても試合は終わります。となると、「勝利チームの攻撃で」という限定的な状況が重要になってきます。
これがどういうことを意味するかを、普通にサヨナラで試合が決まる以外のパターンを考えてみましょう。
一般的な試合では、守ってるチームが相手チームを抑えて試合終了となります。つまり、勝利チームは「守備で」試合を終えることになるのです。
しかし、サヨナラ勝ちの場面は、勝利チームの「守備」ではなく「攻撃」で試合を終えることになります。これは一般的な試合と比べて特殊な例です。
そのため、対比として「攻撃でおしまい」ということを強調するために、「サヨナラ」という言葉が使われるようになったのではないでしょうか。
要は、一般的には守備側が9回(または延長の回)の3アウトをとって試合が終わるけど、
攻撃で勝ちが確定した場合に”ここで終わりだよ~”というのを強調するため
だと思います。
でも、その言葉を表現するのに「サヨナラ」である必要性はあまり感じません。
とはいえ、
- 「さようなら」という一般的なあいさつでよく使われる言葉であること
- 「サヨナラ」と4文字で、短いシンプルな言葉であること
の2点からこの言葉が定着したのではないでしょうか。
メジャー・リーグでの「サヨナラ」は何と言うのか
野球の本場アメリカ(英語)でのサヨナラ勝ちは「Walk Off」
さて、サヨナラの由来は何となく分かりました。どうやらアメリカの用語を訳したわけではないようです。
では実際のメジャーリーグでは何と言うかというと、「Walk Off」というそうです。サヨナラ勝ちなら「Walk-Off Win」。
これは、負けた側の投手が歩いて帰ってくることに由来しています(出典:wikipedia)。負けた側の投手がうなだれてトボトボとベンチに帰る姿が目に浮かびます。
walk-offで調べると「立ち去る」という意で、野球だと
試合[ゲーム]の途中で降りる[やめる]
出典:英辞郎 on the Web
となるそうです。
Walk it off, Walsh! pic.twitter.com/XilEPdcE4O
— MLB (@MLB) July 3, 2021
確かに、サヨナラ負けした側の投手は3アウトを取れずにゲームの途中でマウンドから立ち去らないといけないですね。
もしやこの「投手がマウンドから立ち去る」というのを「サヨナラ」と訳したのでしょうか。
でもそうだとしたら、ちょっと残酷ですね。
英語だと「マウンドから降りる(walk-off)」という投手状況を表すのにとどめています。
一方で日本でのサヨナラ勝ちの意味が、立ち去る投手への「さようなら!」という意味だとするならば、それは単なる相手へのヤジであり、侮辱になりえます。
だから、この説は合っていてほしくないですね。
メジャーの実況が言う「Goodbye」はホームランの時に使う
ここまでいろいろ考えてきましたが、僕がよく耳にした「Goodbye Baseball」という言葉の謎がまだ残っています。
調べてみると、どうやらこれは「ホームランの時」に実況の方が使う言葉ということでした。他にも次のような言葉があります。
メジャーリーグでホームランの時に使われる言い回し
・Goodbye Baseball((野球の)ボールよ、バイバイ!)
・See ya!(バイバイ!)
*See yaはSee youを簡略してフランクに言った表現。「セイヤー」って聞こえる。なんかカッコイイ発音
・It’s gone!((ボールが)行ってしまった。消えてしまった)
*日本語だと「ゴーンヌ」って聞こえます。
などがありました。
全部「ボールよバイバイ!」って感覚でしょうか。これでホームランを強調しているのだと思います。
つまり、僕が聞いた「Goodbye Baseball」はホームランを表す実況だったということです。
僕はサヨナラ勝ちの場面で「Goodbye Baseball」を聞いたと思ったのですが、それは「サヨナラホームラン」だったからでしょう。
実況は、ホームランとして「Goodbye Baseball」を表現していたと思います。そしてその前後にサヨナラと表す表現として、「Walk Off Win」とか「Walk Off Homerun」とか言っていたのだと推測します。
この言葉を僕が聞き逃していた、または理解できなかったために勘違いしたんだと思います。
ちなみに、メジャーリーグの実況でも、「Sayonara(サヨナラ)」という言葉が英語の中に混ざっています。それが使われているのはサヨナラ勝ちの場面ではなく、ホームランの場面です。
「Goodbye Baseball」の日本語として「Sayonara!」というのです。実際に元ヤンキースの松井選手の時にも使われていました。
アメリカは人種のるつぼですので、異なる言語を「意図的に」使うことで、言葉遊びを楽しみつつ、その言語を使う人への配慮をしているのだと思います。
例えば、野球以外の普段の会話でも、「Bye」というのではなく「Chao Chao(チャオ チャオ)」というスペイン語での「バイバイ」を言ったりします(アメリカのドラマはそういう場面が多い印象です)。
最近だと、大谷翔平選手のホームランを「Big fly ! Ohtani san」と表現する実況が記憶に新しいでしょう。
追記:大谷翔平のホームランの時も実況が「Sayonara(サヨナラ)!」と実況
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手のホームランの時も「Sayonara(サヨナラ)!」と実況されていました。
2021年6月9日(日本時間)の試合です。次の動画がそのシーンです。
実況再現
打球が上がったあとの実況を再現すると、こんな感じです。
Shohei Way Way Sayonara!(ショーヘイ、どうだ、どうだ、サヨナラ(ボールよバイバイ)!」
Where did that land ?(どこまで飛んだ?)
サヨナラ勝ちという意味ではなく、「ボールよバイバイ!」の意味で使っていますね。
このホームランのかなり飛んでいたので、実況もビックリしています。
まとめ
まとめます。
ここまでいろいろ調べたり、考えたりしてきましたが、下記の僕が考えた仮定はいずれも間違っていました。
- 仮定1. 勝ってすぐに”さようなら”するから
- 仮定2. 勝って相手を永遠に追いつけなくするから
- 仮定3. アメリカ由来=Goodbye Baseball
サヨナラと呼ばれる理由の答えは、「勝利したチームの攻撃で終わること」でした(諸説ありますが現時点では)。守備で終わるのではなく、攻撃の途中で試合が決まってしまうことを強調している、ということも考えてきました。
これで次から「なんでサヨナラ勝ちって言うの」と聞かれても大丈夫そうです。
さて、、、この記事を書いているのは2018年12月31日です。
2018年がまもなく終わり、来年には平成も幕を閉じることになります。2018年、また平成の間は多くの感動的なサヨナラ勝ちが生まれました。
2019年以降、新しい元号となっても、多くの”サヨナラ勝ち”が見られることを祈って締めたいと思います。
2018年、平成よサヨナラ!!!