「山本由伸投手は将来の日本球界のエースになる」
この記事では、なぜそう思うのか、どのように山本投手がすごいのかを紹介します。
特に、山本投手の武器の一つである「カットボール」に焦点を当てたいと思います。
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今の日本球界のエースは菅野か、千賀か
山本投手の話題の前に、今の日本球界のエースを考えてみます。
*日本人メジャーリーガーは含まないで考えます
すると真っ先に思い浮かぶのは、巨人の菅野投手とソフトバンクの千賀投手のどちらかでしょう。
両投手は、2017年のWBCでも活躍し、世界でも通用するピッチャーです。まさに日本のエースたる存在となっています。実際に、日本が破れたアメリカとの準決勝では、どちらも素晴らしいピッチングを披露しました。
また、両者に共通して言えるのは、メジャー志向であることです。それぞれメジャーリーグへの想いを口にし、球団にも訴えています。
しかし、彼らが所属するジャイアンツとホークスが移籍を認めておらず、現時点ではメジャー挑戦が実現していません。とはいえ、彼らは数年後には必ず大リーグに挑戦し、活躍していくでしょう。
さて、このような日本のエース2人は、やがてメジャーリーガーとなると想定すると、日本のエースは誰になるでしょうか。こう考えた時、私には山本由伸というオリックス3年目の若武者が、将来の日本球界のエースとなると思うのです。
2019/11/18 追記:山本由伸投手はプレミア12で「中継ぎエース」として活躍し、見事に日本の世界一に貢献しました。特に決勝の韓国戦では、140km/h後半のフォークボールに149km/hのカットボールなどキレキレで、圧巻のピッチングで世界を驚かせました。 来年の東京オリンピック、そして2021年のWBCでは「先発エース」として無双してくれることを期待します。
Yamamoto #filthy !!!!!!!!! 🇯🇵 山本由伸投手のフォークボールの軌道!⤵😵 8回を2奪三振無失点におさえる! #侍ジャパン #プレミア12 #Premier12 @SamuraiJapan_pr #프리미어12 #KBO @NPB @Orix_Buffaloes pic.twitter.com/IstfF94Shv
— WBSC ⚾ #Premier12 (@Premier12) November 17, 2019
山本由伸とは?プロフィールと成績
まず簡単に山本投手のプロフィールをまとめました。
プロフィール
名前:山本 由伸(やまもと よしのぶ)
出典:NPB公式サイト ( 2019/5/19時点)
年齢:20歳
チーム:オリックス・バファローズ
ポジション:投手
投打:右投右打
身長/体重: 178cm/80kg
生年月日:1998年8月17日
経歴:都城高
ドラフト:2016年ドラフト4位
まだ20歳と若い3年目の選手です。ドラフト4位でありながらも、首脳陣の期待も高いとのこと。
成績
2年目の2018年には中継ぎエースとして活躍しました。主に8回を任され、防御率2.89と素晴らしい成績を残しています。
昨年は新人王候補になりながらも、残念ながら新人王を楽天の田中選手に譲りました。
それでも、他チームの脅威となる存在だったことは間違いありません。
そして今年の2019年シーズンは先発投手として活躍。7試合で防御率1.57と優れた成績で、オリックスのローテーションを支えています。
山本由伸の凄いところ
そんな山本投手の凄いところは数多くあります。その中でも、個人的にすごいと思ったポイントをまとめました。
150km/h超えのストレート
魅力の一つ目は、150km/h超えのストレートです。最速157km/hをほこり、将来的にはもっと速い球が投げられるのではないかと思われます。
本人も160km/hを目指せると語っており、さらに進化しそうです。
この豪速球で打者をねじ伏せています。
多彩かつ、キレのある変化球
山本投手は多彩な変化球を持っています。
2018年には新球のカットボールを磨き、2019年にも新たにシュートを習得しています。
その種類は、スライダー、スプリット(フォーク)、カーブ、チェンジアップ、ツーシーム、カットボール、シュートと多岐に渡ります。
特に2018年には140km/h台後半の高速カットボールを勝負球に使っています。
先発となった2019年シーズンも、多くの種類の変化球を投げわけています。
強い意志と負けん気がある
3つ目のすごいところは、強い意志があることです。
その例が、先発への強いこだわりでしょう。
昨年はセットアッパーとして大ブレイクしましたが、ずっと先発を志望していました。楽天の松井裕樹投手のように、今後も中継ぎや抑えのエースとしての道もありました。
しかし、山本選手は先発投手として活躍したいという強い意志を持ち続けたのです。
また、山本投手はストレートでガンガン押していくイメージもありますが、変化球でもバンバン三振を奪っています。
どんな球を投げるにせよ、打者に向かっていく闘志は見物です。
クレバーさを持っている
山本投手は力強いストレートで押していくタイプかと思いきや、クレバーさを持ち合わせています。
それを象徴するのが、
(1)2018年にカットボールを覚え
(2)スライダーを投げる割合を減らしたこと
です。
カットボール習得秘話
山本投手はプロ入り時からカットボールを武器にしていたわけではありません。
プロに順応し、もっと勝てるピッチャーになるために、山本投手自身が必要だと考えて習得したボールなのです。
その背景には、1年目(2017年)の時に経験した一軍で先発した際に苦労した経験があります。
山本投手は先発として1勝しますが、 どうしても球数が多くなってしまっていました。山本投手の武器である豪送球やキレのある変化球も、1軍レベルのバッターでは簡単に空振りしてくれなかったのです。
1軍で活躍する打者は、ファールを打って逃げ、甘い球を確実に仕留めるという術を持っているのでしょう。
その結果、山本投手は何とか5回を乗り切るのがやっとで、長いイニングを投げることができていなかったのです。
そこで、山本投手は球数を少なくして抑える方法を試行錯誤したのです。
そしてたどり着いたのが「カットボール」ということです。
山本投手はカットボール習得の背景について、こう語っています。
球数を減らしながら、打たせてアウトを稼ぐボール。肩やひじへの負担の少ない球ということでカットボールに辿り着きました。
昨年の12月頃からですね。
普段のキャッチボールや遠投でも、カットの握りで放ったりして。最初は、しっくりこなかったのですが、この春の宮崎キャンプあたりから、次第に感覚を掴み始めてきたんです。
今では、本当にこのボールに助けられています。
SportsNaviコラム 山本投手の発言より
このように、球数が多くなるという課題に対して、投球術ではなく、新しい変化球に取り組むといアプローチはとてもクレバーだと思います。
そちらの方が将来的にも投球の幅が広がりますし、カットボールを選んだことも賢い選択でした。
肘への負担を考え、割合を減らしたスライダー
また、2018年シーズンの山本投手は武器であるスライダーを封印しました。
スライダーは山本投手の代名詞の一つとなるような、曲がりの大きく、空振りを奪えるボールだったにも関わらずです。なぜなのでしょうか。
それは単に、山本投手のスライダーが通用しなくなかったからではないそうです。その理由を、本人はこう述べています。
ボールが通用しないとかそういうわけじゃなく、大きく曲がる変化球って、ずっと投げているとしんどいと感じたので。
スライダーって曲がりが大きい分、ちょっと抜いて投げたら、相手がプロだと簡単に打たれてしまう。
だから思いっきり腕を振らないといけないんですけど、そうするとやっぱりしんどいんです。
肘とかへの負担がすごく大きいので、まだ体がちゃんとできていない中で投げるのは控えるべきかなと思って。
去年(2017年)はスライダーに頼ってばかりだったので、こんなんじゃダメだなと。先のことを考えても、今を見ても、違うのかなと思ったんです。
で、どうすればいいかなーと考えて、カットボールをどんどん打たせていきたいと。自分も楽になるし、という感じです。
NumberWeb 山本投手の発言より
強気なピッチングをする山本投手ですが、このように将来的に活躍することを考えていたのです。
肘への負担や身体の成長を考慮することはできても、自信のある変化球(スライダー)を封印することはなかなかできることではありません。
*2019年はスライダーも投げていますが、その投球割合は4.12%とそこまで大きいわけではありません(5/18時点)。
冷静な判断であり、賢さに実行力が伴っていることが素晴らしいです。
魔球・カットボールがえぐい!
ホームラン王・山川も驚くカットボール
山本選手の中で一番特徴的な変化球は、カットボールだと思います。
カットボールはカッターとも言われ、打者の手元で微妙に変化するボールです。このボールを操って、昨年2018年5月1日にはプロ初セーブをあげています。
私は恥ずかしながら、山本投手をしっかり見たのはこの試合でした。
DAZNで観戦していたのですが、その投球に衝撃を受けました。150km/hを超えるストレートと、切れ味抜群のカッターで、その年に優勝した西武打線をキリキリ舞いにしていたからです。
対戦した埼玉西武のホームラン王・山川穂高選手は
あんなカットボールは見たことがない!
出典:日刊スポーツ
と驚愕していました。
カットボールはメシを食っていける「ミールピッチ」になりうるボール
知る人ぞ知る野球番組「球児苑」(NHK BS)においても、カットボールが特集されていました。
その中で、メジャーリーグ解説者のアキ猪瀬さんは、
カットボールはミールピッチ、つまりメシを食べていくためのボールになりえます
出典:球児苑「カットボール」
と番組終盤に述べていました。それくらい、打者が打ちづらい変化球なのです。
その一方で、習得は難しいということも指摘されています。
そんな難しい変化球を自分のものにした山本投手は、器用さも持ち合わせているということでしょう。
番組での山本投手ですが、先発投手のカットボールに焦点が当たっていたのか、残念ながら最初の方に映像で映るのみでした。
しかし、この番組で一瞬でも映るということは、山本投手がカットボールを操るカットボーラーとして認識されている証拠ではないでしょうか。
2019年シーズンは先発再転向!スタミナが心配だが問題なさそう
先発では毎回全力投球とはいかない
山本投手はもともと入団してからは先発をしていました。
しかし、昨年の2018年は中継ぎのみの登板となりました。
2019年シーズンは、金子投手や西投手といった先発投手が移籍したことや、本人の強い希望もあり、再び先発として勝負していくこととなりました。
そこで心配されていたのがスタミナ面です。
中継ぎでは1イニングに全力でいきますが、先発はそうはいきません。長い回を投げて数失点以内で抑えることが求められますが、全ての回を全力投球していてはスタミナが切れてしまいます。
その点、山本投手本人も自覚していましたが、適応への準備はできているようです。
以下は山本投手のコメントです(2019年3月の記事にて)。
監督、コーチや周りの方からも体力面をすごい心配されているので、そこですね。1年目は先発でしたが、5イニングしか投げていなかったですし。
それから1年半経ち、自分自身では長いイニングも投げられると思っています。それを、しっかり見せていきたいです。
出典:週刊ベースボールオンライン
先発でのスタミナは大丈夫?投球回と球数を見ても問題なし!
では実際にそのスタミナ面はどうなのでしょうか。
2019年シーズンの成績と登板日ごとに見てみましょう(2019年5月18日時点)。
この表は、2019年の登板日ごとの投球回や球数をまとめたものです。
これを見ると、平均投球回は7.38回であり、平均球数も104.1球とスタミナ面は問題ないようです。
しかも、平均自責点は1.3点と素晴らしいものとなっています。
*5/16ロッテ戦の失点が6と大きいのは、守備陣が1イニング3エラーと足を引っ張ったことが影響しています。
このように、心配だったスタミナ面は何ら問題ないことが分かると思います。
1年を通してのスタミナや、心のスタミナがなくなる方が心配
とはいえ、シーズンを通してのスタミナはまだまだ心配です。
夏場にかけて疲労がどんどん溜まっていきますから、初めてシーズンを通してローテーションで投げる山本投手にとっては、苦しいはずだからです。どうかケガだけはしないで欲しいと思います。
そして、もう一つのスタミナ面も大丈夫かな?と不安に思ってしまいます。
もう一つのスタミナ面とは、心のスタミナ面です。なぜなら、援護点が少ない、つまり味方が点を取ってくれないため、心が折れてしまう可能性があるからです。
4/3の初登板では、ソフトバンク相手に9回1安打無失点と完璧な投球をしたにも関わらず、味方の援護がなく、勝ちがつきませんでした。
また、4/25の同じくソフトバンク戦でも8回無失点でしたが、勝てませんでした。
援護率も1.15と非常に低い数字です。(5/15時点 出典:データで楽しむプロ野球)
とはいえ、強い意志のある山本投手ですから、それでも耐えながら踏ん張り続けると思います。
また、そのような状況下で投げることで、学べることや身につくこともあるでしょう。
今の日本球界のエースの菅野投手も、援護点が少ないとことで有名でしたが、それでも安定した成績を残しています。
エースになるには乗り越えなければいけない道なのかもしれないですね。
日本のエースへ!期待は東京オリンピック2020とWBC2021
そんな山本投手は、今後も先発投手として活躍していくでしょう。
また、日本代表として戦う日も近そうです。
実際に、侍ジャパン代表の稲葉監督も山本投手の素質に注目しています。中継ぎと先発の両方ができる山本投手の存在は、監督にとってありがたい存在でしょう。
来年の2020年には東京オリンピックで、山本投手が世界を相手に躍動していく姿が目に浮かびます。
このような世界大会では、僅差の厳しい試合が続くはずです。
そんな時には、現在の山本投手が置かれる状況が役立つことにもなるでしょう。山本投手は、援護率が1.15という厳しい状況でも投げ続けているからです。
そしてその次の年には、WBC2021があります。
ここでは菅野投手や千賀投手を差し置いて、山本投手が日本のエースとして君臨する可能性もあります。山本投手の成長度次第ですが、そのポテンシャルがあることを結果で示し続けています。
ぜひ、「ミールピッチ」にもなる「カットボール」を、今後も磨いて欲しいなと思います。
その暁には、一流打者を上手に「料理」する日本のエースになっていることでしょう。
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