球団の人は選手を買うことばかり考えています。
だけど、本来買うべきものは選手ではなく、”勝利”なんです。
“勝利”するには得点を買わないと。
出典:映画『マネーボール (字幕版)』より
これは映画『マネーボール』でピーターが言った言葉です。
短い言葉ですが、とても説得力がありますよね。マネーボールの名言だと言えるでしょう。
このように、映画『マネーボール』を久々に見て、いい言葉やいいシーンを再発見しました。
この記事では、久々に見た感想とグッときたシーンを紹介します。
何度も見たい映画の一つになりました。
簡単なあらすじ
この映画は、弱小貧乏球団のGMだったビリー・ビーンとそのスタッフピーター・ブランドが、統計学を中心としたデータ分析を使ってチームの快進撃を導く物語です。
実話を元に制作されました。
映画でも実話でも共通ですが、当時はあまり活用されていなかったデータを使った選手分析や手法を用いています。
データを活用することで野球界に革命を起こしたのです。
当時から以前の選手評価では、客観的ではなく、主観的な評価がされてきた背景がありました。
映画の中でピーターはこう語っています。
いい選手がつまらない先入観や目につく欠点で過少評価されています。
出典:映画『マネーボール (字幕版)』より
ここでいう先入観とは、年齢、ルックス、人柄のことを指しています。
つまり、統計的なデータとして優れている選手でも、年齢、ルックス、人柄を理由に過小評価されているということです。
この事実に気づいていたピーターに目をつけたのが、アスレチックスGMのビリー・ビーンでした。
ビリーはピーターを側近スタッフへ抜擢し、「過小評価されている選手を発掘し、低予算で手に入れる」戦略に出ます。
さらに、試合ではバントを多用しないなど、大胆な戦術を使ってチームを連勝に導いていきます。
MoneyballからDataballへ
そもそもなぜマネーボール(Moneyball)というタイトルなのでしょうか。これは、Wikipediaによると、以下のようなメジャーリーグの状況を指しているようです。
2000年代初頭のメジャーリーグは、財力のある球団とそうでない球団の格差が広がり、良い選手はことごとく金満球団へ引き抜かれる状況が続いていた。貧乏球団のオーナーからは、「もはや野球はスポーツではなく、金銭ゲームになってしまった」という嘆きの声が上がっていた。
出典:Wikipediaより
つまり、当時の状況が野球(Baseball)ではなく金銭ゲーム=マネーゲームになっているがゆえに、マネーボール(Moneyball)と言われるのでしょう。
しかし、実話や映画で主人公のビリーらが起こした革命は、その逆でした。客観的なデータに優れた選手と戦術を活用できれば、低予算でも勝利できることを証明したのです。
これらのことから、タイトルのマネーボールは次のようなタイトルもあり得たなと思いました。
- マネーボールに勝利した男達
- マネーボールを変えた男達
- DataBall
なお映画の元となった本のタイトルは、
でした。
日本語版の副題は「奇跡のチームをつくった男」です。副題も方がそれっぽいですよね。次の画像は新装版の書籍です。
とはいえ、マネー主体のゲームから、データ主体のゲームへと移るきっかけになった本、映画です。
そういう意味で、マネーボールから「データボール」への変革の象徴となる作品になったと言えるのではないでしょうか。
新しいことへの反発はどの世界でも同じ
ビリー達のセイバー・メトリクスを中心とした戦略は、当時では大きな反発を受けました。実際にビリーは、同じ球団のスカウトや監督から猛反発をくらってしまいます。
日本と比べてアメリカは、比較的に新しいことへの挑戦を推奨する文化がありますが、それでも大反対を受けてしまうのです。
ここから分かることは、新しいことへの挑戦、特に今までの現状を大きく壊すようなことに対しては、日本だろうとアメリカだろうと周りからの反対を受けるということです。
余談ですが、二刀流で成功している大谷翔平選手も、日本では当初大反対をくらっていたのはご存知の通りです。
また、2018年のメジャー春キャンプでは成績が残せず、二刀流に懐疑的な声が上がっていたのがその例です。
関連記事 » 大谷の1番の強みは鈍感さである
さて、映画のマネーボールに戻ります。
周囲が大反対する中でビリー率いるアスレチックスは快進撃を続けます。
するとおもしろいことに、周りの見る目が変わってくるのです。そこは日本とアメリカも同じですね。
とはいえ、映画を通して、新しいことへの挑戦には様々な反発があることを改めて感じました。
映画『マネーボール』で一番好きなシーン
ここから映画の中で1番好きなシーンを取り上げたいと思います。
ネタバレ含みます
残念ながら、野球のシーンではありません。
そのシーンは
ジオンビ選手をフィリーズに放出(トレード?)した後、ピーターが監督に対して言ったシーン
です。
*ピーターは、以下の予告編動画の1:18頃にガッツポーズしている男性です。
このシーンでは、GMのビリー・ビーンがジオンビ選手に対して、フィリーズへのトレードを告げます。
その部屋には、彼らの他に、ピーターと監督がいました。
突然のことに驚くジオンビ選手も、数十秒後、事態を受けいれてその場を去ります。
この放出は、チームの和を乱すようなジオンビ選手の行動に腹を立てたビリーが、感情任せに行ったようにみえました。
これに対してピーターは、最初は反対するものの、最終的にビリーGMの決断を受けいれます。
そしてピーターは監督からの質問に、毅然とした態度でこう答えています。
監督:君も(ジオンビ放出に)賛成したのか?
ピーター:ええ。100パー!
このピーターの受け答えは、英語だと「100%」と言っていますが、日本語吹き替えだと「ええ。100パー」というフランクな感じで言っています。
不満そうな監督に向かって、ピーターは堂々と言い放っているのです。
この時に「ラフに」「言いきっている」ところにグッ! ときました。
ピーターはイエール大学卒のエリートですが、新卒でメジャーの球団スタッフとして入社したばかり。言わば”ひよっこ”なワケです。
実際に最初の頃のピーターは、選手にクビを言い渡すのにビクビクしていました。
しかし、ここにくる過程までに、選手にクビを告げる経験を何度もするなど、責任者として成長しているのです。
このような過程があってこそ「ええ、100パー(賛成)」というピーターの発言があります。
シーンです。
監督に選手放出の是非を問われ、ピーターはここではっきりと「フランクに」100パーと言い放っています。
僕はここに、彼の責任をとるという覚悟が見えました。このシーンはおもしろいシーンあり、ピーターの決意を知れた気がしてグッときました。
だから、1番好きなシーンてす。
マネーボールを見たい方へ
マネーボールは本、映画といろいろあります。こちらでは簡単に整理しておきます。
マネーボールの映画や本
映画『マネーボール』
映画の『マネーボール』はもともと英語で製作され、その後に日本向けに「字幕版」や「吹き替え版」が発表されています。
和訳版の本『マネーボール』
元ネタとなる本はこちらです。和訳版になります。
原作本(英語)『マネーボール』
原作となる本はこちらです。英語で読んで見たい方はどうぞ。
原作本のオーディオブック(英語)『マネーボール』
原作の本(英語)はオーディオブックにもなっています。Audibleなら最初の1冊は無料なので、試してみるのもありです。
セイバーメトリクス関連の本
映画を見て「セイバーメトリクス」に興味を持った方は、以下の本から気になるものを読んでみてください。
初心者向け
セイバーメトリクス入門
セイバーメトリクスの入門書としてとても分かりやすいです。
巻末にある「用語解説」もすごくありがたいです。
セイバーメトリクスやデータ分析の具体的な手法を知りたいという方にはうってつけの本です。
中級者以上向け
勝てる野球の統計学
統計学と聞くと難しいと思うかもしれませんが、題材となるのがプロ野球選手なので分かりやすいです。
ただ、著者の鳥越さんが博士号を取得している統計学者なだけあり、かなり突っ込んだ分析もしています。そのため、多少は統計学やセイバーメトリクスの知識がある方が読むとより楽しめるかもしれません。
初心者の方が読む場合は、まずは自分が興味を持った分析のところから読むといいでしょう。
新時代の野球データ論
フライボール革命という言葉に興味を持った方が読むとおもしろい本です。
特にメジャーリーグの試合やデータ分析に興味がある方は、より楽しめると思います。
*本書のKindle版はKindleUnlitedという月額読み放題サービスの対象です。KindleUnlitedは初回30日間無料なので、こちらで読んでもいいかもしれません。
野球のデータに興味がある方は、次の記事でデータが見れるサイトを確認してみてください。
関連記事 » 野球のデータが見れるサイトまとめ