【高校野球】100球の球数制限によって予想されること3つ【春の新潟大会】

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1試合100球までの球数制限を設ける

新潟県高校野球連盟(以下、新潟高野連)は 12月22日(2018) 、2019年の春の県大会からこのルールを適用すると発表した。

ルールは具体的に以下であるという。

  • 1試合100球までの球数制限
  • 連投による制限はない
  • 100球に達した場合、それ以降の回では投球できない
  • 春の県大会のみの適用であり、夏の大会では球数制限は課さない

この発表に驚いた人も多いことだろう。私もそのうちの1人だ。

そこで、今回は100球の球数制限によって予想されることを3つ取り挙げる。ここでの予想は、2019年春の大会とそれまでの準備期間に起こりうることを対象としたい。あなたもこの機会に、球数制限について考えてみてはいかがだろうか。

目次

予想①粘りでエースを降板させる戦略が成り立つ

まず一つ目に挙げられるのが、「粘って早めにエースを降板させる」という戦略だ。投手の球数が100球までと決まっているのであれば、早めにその投球数まで投げさせ、二番目投手を打ち崩すという作戦である。

一般に、エースがそのチームで1番いいピッチャーだ。だから、そのピッチャーに対してボールをよく見てファールで粘り、球数を投げさせるのである。またはチームとして2ストライクになるまで振らないという作戦もある得るだろう。

例えば6、7回までに粘ってエースを降板させれば、それまで負けていたとしても、二番目投手から逆転できるかもしれない。

逆に、投手の立場からすれば厄介だろう。くさいところに投げているのに打者が振らない、いい球を投げてもファールにされてはイライラも溜まるはずだ。

その一方で投手側のメリットもある。100球という球数制限があるおかげで、初回から全力投球ができるのだ。打者が振ってこないのなら、どんどんストライクを投げて自分のペースにもっていくのもありかもしれない。

このように、1試合100球までというルールにより、打者と投手の両者のアプローチが変化してくることが予想される。

予想②強豪校の勝ち上がりが目立つ

2つ目は、強豪校の勝ち上がりが目立つということである。

これは、100球で投手が降板するという状況は”どのチームも同じ”であることが関係してくる。

強豪校には良い投手がいることが多い。それに対して弱小チームがこの戦略を使うことは一つの手だろう。打ち崩さなくても、相手が崩れるのを誘って早めにエースを降板させれば、2番手以降の投手に付け入る隙が生まれるかもしれない。

しかし、強豪校も同じく同様の作戦を取れる。そのため、互いのチームの先発投手が早めに降板した場合、二番目投手以降の勝負となることが予想される。

そう考えると、強豪校、特に私立校に有利である。なぜなら、選手層が厚いため、二番目投手以降も優れた投手が揃っているからだ。

例えば、2018年の甲子園で春夏連覇した大阪桐蔭高校だ。根尾を含めて、柿木、横川とプロ野球選手になる投手が3人もいたのである。大阪桐蔭高校の例は全国からエリート選手が集まることから特殊かもしれない。だが、強豪校と呼ばれる高校のスカウトティングは当たり前であるし、そこにいい投手が2、3人いてもおかしくない。

新潟県であれば、夏の甲子園で準優勝経験のある日本文理高校や、新潟明訓高校、または中越高校といった私立高校が筆頭だろう。

このように、総合的な投手力のある私立を中心とした強豪校が有利だということだ。そうなると必然的に強豪校が勝ち上がる可能性も高くなる。

予想③春の大会までに控え投手育成の急務となる

3つ目は、控え投手の育成・成長が必要になるということである。これは春の大会中ではなく、それまでの準備についての予想だ。

予想①、②から分かるように、100球の球数制限があると、2番手投手が登板する可能性が高い。試合を決める終盤で2番手投手となるということは、エース以外の控え投手の充実が必要になるということだ。

ここでいう充実とは、投手の量と質を上げることである。量とはつまり、投手の数だ。少なくともエース以外に2人は欲しいところだろう。延長12回の後にタイブレイクがあることから、2人で200球投げれば3人目は必要ないかもしれないが、万が一のために3人目もいた方が良いだろう。

続いて質だが、こちらは投手それぞれの実践で使える能力のことである。簡単に言うと実力のことだ。 控え投手の実力を上げないと、試合の終盤で差がついてしまう。

このように、エース以外の控え投手の充実が急務となるだろう。

しかし、こういった投手力をあげることは簡単なことではない。なぜなら、時間が圧倒的になりないからだ。新潟高野連は12月22日(2018)という時期に発表し、早くも2019年の春の大会からルールを適用するという。それまであと3,4ヶ月しかない。

これはだいぶ酷な話だ。なぜなら、仮に新しい投手を育成しようとしても、冬の実践練習がない中ではその成長が限られるからだ。投手としての練習を多く積んだとしても、それが実際の試合で使えるようになるには、練習試合などの実践期間が必要になるのである。投手育成は甘いものではない。そうなると、現時点で投手の選手層が厚い強豪校に余計に有利となってくるだろう。

新潟高野連は、もっと前もって発表するか(実践ができる間、遅くとも2018年秋など) 、導入を2019年秋以降にする等の配慮をして欲しかった。

とはいえ、春の大会までに控え投手の育成が充分にできるとは限らないと述べたものの、 少なくとも夏の大会に活きることは間違いないだろう。夏の大会は球数制限がないそうだか、控え投手の育成に悪いことは何もない。むしろメリットも多い。

例えば練習中の効果としては、エースへの刺激となり、投手間の競争による投手力全体の底上げにつながる。夏の大会ではエースへの負担軽減ともなる。また、指揮を執る監督側からすれば、投手選択のオプションが増えることはマイナスではないはずだ。例えば、控え投手が左の変則フォーム(サイド)であり、 相手チームが左打者が多い場合、あえてエースを登板させずに左サイドの投手を先発させることもできる。

その他の影響

予想①~③以外の影響も考えてみる。

夏の大会への影響

新潟高野連は、今年の夏の大会での球数制限の導入は検討していないと言う。だが、夏の大会のシードは春の大会の成績で決まる。そういう意味で、影響は出てくるだろう。

そのため、各チームの監督や選手は「球数制限は試験的にやるものだから負けてもしょうがない」とは一切思わないはずだ。ベストを尽くして球数制限への対策をしてくるはずである。

そうなると、やはり私立の強豪校が春の大会で勝ち上がり、夏の大会のシードを獲得するだろう。強豪校がシードをとると、強豪校同士がトーナメントの序盤で当たることがなくなる。だとすれば、強豪校の序盤の試合では、実力が劣るチームに対して比較的に消耗せずに勝利することができるだろう。

結果として、準決勝や決勝では私立の強豪校が名を連ねてくると予想する。

エース投手への影響

次にエースへの影響だ。春の大会に限って言えば、これは明らかに減るだろう。普段の試合で100球以上の球数を投げている投手からすれば、肘への負担も減ってくるからだ。

逆に精神的な負担として、「いかに少ない球数で打ちとるか」というプレッシャーがあるだろう。控え投手が充実していないチームのエースであれば、なおさらそう考えるはずだ。

そして忘れてはならないのが「夏の大会」でのエースへの負担だ。こちらは逆に、例年の夏の大会と同等かそれ以上にエースへの負担度が増すと予想する。理由は3つだ。

第一に夏の大会は猛暑でありながらも球数制限がないこと、第二に「敗れたら3年生は引退する」というプレッシャー、である。「絶対に負けられない戦い」と思うがゆえに、エースに頼って多く投げてさせてしまうことになるだろう。

第三の理由として、春の大会の結果からの影響である。これは、特に強豪校以外のエースに頼りきりなチームに言えることだ。

上記でも述べたように、春の大会は強豪校が勝ち上がり、夏の大会のシード権を獲得する可能性が比較的高い。そのため、強豪校以外が勝ち上がる場合、ノーシードまたは下位シードから進まければならない。この場合、次々と強豪校と対戦することもあり得るのだ。だから、エース依存のチームはエースへ頼ることになり、負担も増すであろう。

賛否はあるが、それでも新潟高野連の新しい試みは敬意に値する

新潟県高野連の突然の発表に対しては、賛否両論の意見が飛び交っている。また、 「球数制限ではなく回数制限すべき」という代替案も出ているという。「このようなことをやっても意味がない」、という批判的な見方もある。

だが、このような球数制限の議論が活発にされているのも、新潟高野連が布石を打ったからである。近年、投球過多による高校生への負担軽減が議論される中、その解決策の一つとして実行することで、社会に具体的な議論を促したのだ。

もちろん、上記でも述べたように、12月(2018)に球数制限を発表してすぐの春の大会(2019)で適用するという、「発表時期と適用時期」については良くないと思う。だが、なかなか新しいことを踏み出せない高校野球業界の中での挑戦は敬意に値する。

今後の議論と春の新潟県大会に期待したい。

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